「生命」

農山漁村文化協会(農文協)の編集者の方から、半月ほど前に信濃毎日新聞で記事として取り上げられたウッドガスストーブ(TLUD Stoves)に関する取材がしたいと連絡があり、その取材を引き受けた。
何という題名になるのかは忘れてしまったけれど、近々バイオマスストーブを特集した本を出版するとのこと…本や新聞に写った自分の姿を見るにつけ、う~ん…とがっかりすることは多い。取材を受けるまでは良いけれど完成した本はあまり見たくないのが本音。

まぁ…それはそれとして、ここ数年は自分が理解しているロケットストーブやTLUDについてを人に伝えるためのワークショップを開催したり、時には依頼を受けて制作 設置することもあるのだけれど、「なぜそうするのか…」を伝えることはとても難しいことだ…と思い続けたまま いまに至っている。

ロケットストーブという仕組みは、ここ数年の間に猛烈な勢いで知られるようになった。
「ロケットストーブ」と日本語で検索してもヒット0だった数年前…この名称がこれほどまでに知られるようになるなんてことはまったく想像できなかったけれど、自分がRocketStovesに惹かれたのは…と考えてみると、果たしてロケットストーブはRocketStovesなのだろうか…と思うのだ。

3.11を経験した私たち…。
いままでと同じではない…と思い始めている人々は多い。
ロケットストーブへの注目は3.11があったからだけではないにしろ、社会の揺れが少なからず影響していることを否定することはできないとは思う。
…とは言え、日本は未だ世界有数の木材輸入大国であり続けているし、日本の山は荒れ続けているのが現実だ。
たかがロケットストーブで問題が解決できるわけがないと言われるかもしれない…。
でも自分は、私たちが抱え込んだまま置き去りにしてきた重大な問題に対する突破口のような何かを感じたからこそ自分でつくってみたいと…いま日本に暮らしている自分だからこそ必要なものだと思った。それがRocketStovesだった。

この世は「生命」に満ち溢れている。
それは姿かたちのない何か…でもその何かは確実にある何かだ。
そして私たちはそれを感じることによってこの世を生きている。
自分だけじゃなく他人を大切に思うことができるのも、それはそこに生命があると感じることができるからだ。

ガスレンジの摘まみを回すだけ…押すだけで火が点くことに驚くことのないこの国に生きながら、毎日何時間もかけて焚き木を探し求め歩き続ける少女のことを想像することは難しい。
いまなお、焚き火で調理せざるを得ない人々が世界の人口の半数、調理することから発生する煙を吸い込むことによって命を落とす人々は、年間に約150万人いることを想像することは難しい。
自分にできることは、少女が使っているというRocketStovesを自分でつくってみること…そしてそれを使ってみること。
そうすることによって見えてくるものがあるとすれば、それは「生命」だと私は思う。

TLUDは、木の中にある燃焼性ガスを取り出し燃焼させることのできるシンプルなStoves…木の中にある燃焼性ガスを燃やすことによって炭素を封じ込めることができる…ようするに『炭』をつくることができる装置でもある。
そうしてつくられた炭を土壌に埋めることによって土壌中の微生物が増え、植物の生育は促進される…。
この燃焼の仕組みを自分でつくりたいという人が増えてほしい。
そしてできることなら、その炎が生きていること…この世に満ち溢れる生命を感じてほしいと思う。

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