先週、経済協力開発機構(OECD)が、2012年に65カ国・地域の15歳、約51万人を対象に実施した学習到達度調査(PISA)の結果を公表した。
日本は前回から順位を上げ7位。学習指導要領の改訂や少人数指導の普及など、「いわゆる『ゆとり教育』から脱却し、確かな学力を育成する取り組みが功を奏した」と、下村博文文部科学相をはじめ教育関係者は喜んでいるそうだ。
また、重点調査対象となった数学的応用力については、得点に影響を与えると考えられる5つの要因の調査も行われ、その結果、授業への関心度は低く、全体的に学習に常に不安を感じている生徒多いなど、得点順位は上位ではあるものの、学習に対する意欲は平均すると、65カ国中60番目以下という結果。
http://www.oecd.org/pisa/keyfindings/PISA-2012-results-snapshot-Volume-I-ENG.pdf
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131204-00000004-resemom-life
そもそも、この学力到達度調査の目的は何であるのかを考えれば、その実施主体者がOECDであることからして、国際経済成長という目的性を切り離すことはできないが、OECD加盟国の多くで義務教育の終了段階にある15歳の生徒をこの調査の対象とすることによって、教育における国際基準の標準化は加速し、結果、生徒の学力向上が国の経済発展を大きく左右するという思考性が増大するのは当然だ。
特に今回調査の上位を占める、上海、シンガポール、香港、台湾、マカオ、韓国、…中国を中心としたアジア諸国・地域が上位を独占している状況は、このところの国際経済の動向とも関係していることは明らか…
こうしたPISA上位国に地理的に囲まれている日本としては、かつて明治維新後に義務教育を導入し、「殖産興業」「富国強兵」を推進し、欧米列強の一角に食い込んで行った自らの歴史を思い起こさずにはいられないだろうし、そうした意味からすればPISAの上位に如何に位置できるかは日本にとっての極めて重要な外交戦略とも言えそうだ。
学力の国際的優位さは、国際的な経済競争力における優位性を得る為に重要であるという論理は、それはそれとして理解はできる。しかし、見方を変えれば、国の地位や安定…ようするに国が他国から脅かされたり、侵略されない為に…対等な競争力を得る為には学力が重要であるということでもあり、そういった意味からすれば教育には国や経済にとっての必要性がより重要視され、人それぞれの個性の育みは希薄になってゆくのも当然の結果なのかもしれない…。
義務教育終了時点での学力が今後の未来を全て決めるとは言えないし、PISAの調査結果を鵜呑みにすることはできないものの、得点は高いが意欲が低い学習状況はどういった状況なのかを真剣に想像しなければならないはずだが、そもそも、そうした想像力を如何に育むかを考えた教育がなされているのだろうか。
想像力とは、絵を描いたり、モノがつくれるようになる為だけに必要とされるのでは無い。
義務教育での図画工作や美術の重要性が年々軽視されつつある現在の状況は、この時代にあってなお、PISA上位国に名を連ね続けなければならないこと…そして、学習意欲の低さと比例、関係していると私は思っているが、しかし、だからと言って、現状のような図画工作や美術教育をいくら続けたとしても、想像力の豊かさや創造性の育みがもたらされるとは私にはどうしても思えないのだが…。
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