「氷点下」

白馬村落倉高原にある、「深山の雪」の周辺の積雪は1M半といったところ初雪は早かったものの、いまのところの積雪量は少なめだ。昨日(15日)の朝の気温は氷点下15度の冷え込み。このくらいにまで気温が下がらないと聞こえない雪を踏みしめる音。その音がなんとも心地良い氷点下の朝だった。
「深山の雪」は、3.11の津波で家族を失い、福島第一原発の事故によって、福島県大熊町から白馬村へと非難してきた木村紀夫さんが始めようとしている宿の名称。
昨年から、私たち(たぁくらたぁ編集部と小池雅久)は、持続可能な宿づくり応援団と称して、「深山の雪」宿づくりの応援を開始した。
10月にはロケットストーブワークショップを開催し、11月には食堂ラウンジにロケットストーブヒーター…「深山の雪のカルシファー」をみんなでつくり、大工仕事をしたり…。迫り来る冬の気配に焦りながらも、なんとかギリギリ間に合った。
1月14日 夜。「深山の雪」の今年について話そうと、発起人である私たち(たぁくらたぁ編集長、渡辺一枝さん、私)が声を掛け、深山の雪の近く、白馬や小谷に暮らす仲間たちに集まってもらって鍋をつつきながらあれこれ話すことにした。
福島第一原発事故という問題の解決は未だ程遠い…。
と言うよりも、既に「福島」とは、原発問題のみならず、私たちが生きる今が抱えた様々な問題の集積地と化してしまっている感すらある。
しかしながら、そうした様々との関係を見いだせるかどうかは、あくまでも、自分次第…福島を行政区分上の出来事として捉えているだけでは、そことの関係性を見い出すことは難しい。福島と私たちを隔てる行政区分上の線を消し去り、福島としてでは無く、生命の連なりの中で捉えなければ、解決策はもちろん未来は何も見えてこないのではないかと私は思う。

「深山の雪」では、来月2月22日に、真冬のワークショップを行う。
内容についての詳細は現在検討中だが、私たちの今・此処をとりまく「生命を感じ、触れる」場づくりをイメージし、具体的には、狩猟により仕留められたニホン鹿の解体作業を行うことを通じて、私たちが生きる「いま」「ここ」を、私たちが目指す「持続可能性」とは何であるのかをみんなで一緒に感じ、考えてみたいと思っている。
現在、長野県域を生息地とするニホン鹿は、推定105,000頭。その数は年々増加傾向にあり、農林業被害は益々深刻さを増している。
こうした状況に即し、長野県では、第3期 特定鳥獣保護管理計画(ニホンジカ)を策定し、・農林業被害の軽減、・自然環境への影響の軽減、・個体数の削減・地域個体群の安定的な維持を図ろうとしている。
平成24年、狩猟による捕獲頭数(狩猟許可を受けたハンター、猟師による捕獲頭数)は6,895頭。許可捕獲による捕獲頭数(鳥獣保護法に準じて策定される、特定鳥獣保護管理計画により捕獲された頭数)は26,773頭。合計33,668頭。
このうち、食肉加工場で解体加工され、信州産 ジビエ(野生肉)として市場に流通しているのは、約1,500頭。
全体数のうち、猟師、ハンターにより狩猟捕獲された6,895頭は自家消費された可能性が高いとしてそれ以外…許可捕獲された26,773頭は、言わばゴミ扱いとなって、埋められる、もしくは、燃やされるかしているというのが現実だ。

昨年は、ドングリや栗などが豊富だったせいであろうか…。近隣では「熊」の目撃情報が比較的少なかったようではあるが、依然として、ニホン鹿や猪、狸、ハクビシンなどの目撃情報は増え続けており、私たちの生活圏と野生獣の生活圏の曖昧さは増している。とは言え、都市部に生活している人たちにとっては、「へ~そうなんだぁ…」程度のこととして受け取られがち。野生は日毎勢いを増し、私たち人間は益々脆く、弱くなっている。
山と街が限りなく繋がっている此処、信州では、私たちが人間が、野生と如何に折り合いをつけてゆくかが問われ続けている。

26,773頭の許可保護…
それは、私ち人間の生命を維持する為に一方的に獲られる生命の数のあらわれでもある。

私たちがこれからをどう生きるのか…。
「いのちを生かす道」を探りたいと思う。

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