「緑色の匂い」

大気中の緑色に属するもの
彫刻家 若林奮がそう表現したものは何であるのかと考えながら、犬と一緒に、
雪が舞う、白の隙間から薄い青が覗く空を見あげながら雪の中を歩いた。

 

ここには草原が広がっていて、緑色の草原には子供たちが走りまわっていた。

 

草原の先の、池というよりはわずかに広い湖は既に白く、私の視界は向こうの森までずっと白い。
湖面からは、枯れた木が数本顔を出しているはずなのにそれも既に雪に埋もれてしまったか。
あの枯れた数本の木さえあれば、かつてここが周囲と同じ森であったことを想像するには十分だと思っていたのに。

 

私も緑色に属するものであるならば、
この白の中にも緑色が放つ匂いを感じることができる。

 

犬は、雪の中に頭を突っ込んでいた。

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