「学びと成長の糧」

確かに、人間社会を基準とすれば雪もウイルスも台風も…人間社会を脅かす災いの対象だ。人間社会を中心にこの世を捉える限りは自然とは災いをもたらすものであり、自然が無くならない限り災いもまた無くなることはない。究極的に捉えれば、国と国の争いとて、地理学上の自然条件が国益に大きく関係するからこそ。自国の経済は自然に対する備え、災いと直結している。自分もまた人間でありこの社会に生きている以上、災いへの備え、防御の仕組みについて否定こそしないけれど、この世に生きとし生けるものすべては、災いがあるこの世の中で生きることをつうじて、学び成長して来たのだとすれば、災いを暮らしから遠ざけ過ぎることによって逆に、その学びや成長という可能性を阻害することに繋がりかねないと思う。

昨年中には予定を合わせることができなくて、自分の年末年始嫌いを理由に、年始の2日から始めた、上越市高田にある 森のようちえん・てくてく のロケットストーブ式ヒーターづくりは、記録的な豪雪の影響で一時中断。先ずは園舎の除雪を最優先させなければならないと判断して、一昨年の台風被害の際に支援活動し、その時に出来たチームSHIROに除雪協力のお願いをした結果、チームの仲間達と被災当事者でもあるりんご農家の諸先輩までもが駆けつけてくれた。

自然の動きはある程度想定できるとはしても、いつ自然が災害へと変化するかは判らない。今回の降雪は、普段から豪雪に備えている山間地域だけでなく市街地を直撃したことでその被害は災害レベルへと変化した。上越市のような雪への備えがある地域でさえ、人家が密接する市街地への集中的な積雪には耐えられない。市街地化が進めば進む程に自然は遠退き便利さが増す…その便利さとは何なのか。昨日になって、主要幹線道路の除雪は大分進んだように見えるものの、脇道は未だ除雪が追いついていなくて、あちらこちらでスタックした車を押す人の姿があった。

一昨年の台風の影響によって千曲川(信濃川)の水が流域各所で溢れ、長野市長沼地籍の堤防が決壊した。長沼地区は長野の代表的なりんごの産地で、過疎化高齢化は進みつつあるものの、現在も多くのりんご農家がある。そうした農家の家屋やりんご畑に大量の泥水が流れ込んでしまったのだった。自分はちょうどその頃は仕事と仕事の合間で、縁があって繋がった長沼穂保のりんご農家にはたくさんの人達が駆けつけ、連日、共に支援活動を行った。現在は見た目こそ当時の大変さが感じられない程。昨年は無事にりんごの収穫もできるようになってはいるものの、被災地にはまだまだ課題は残されている。

チームSHIROは、そのりんご農家である塚田農園の代表と支援に駆けつけてくれた仲間達によって出来た支援チーム。とはいえ、明確にメンバーが定まっているわけではなく、長沼穂保を中心とした復興支援という緩い目的を共有しているだけのチームにすぎない。…が、だからこそ、個人の意思を尊重しつつ、自助共助に必要な動きがここをつうじて様々に繋がってゆく可能性があると思っている。

自分はそんなチームSHIROの形だけ副代表というチームの一員だと思っているけれど、その自分が仕事で関わっている場所が豪雪に見舞われて、当初は自分一人が除雪の手伝いをすれば大丈夫かな?とは思ったものの、いやいや状況はそれどころでは無さそうだし、ようちえんのスタッフは女性ばかりだし、長野市は新潟のすぐ隣りだし…ということで頼るべきはチームSHIROの仲間達。おかげで、心配していた箇所の除雪作業を終わらせることができたことは勿論ありがたかったけれど、何よりも、あの災害で力合わせた人達がこうしてチームSHIROという力として繋がりあっている姿、その姿に勇気づけられる人の姿を見ながら言葉にしきれないほどの嬉しがこみあげてきた。

ようちえんの代表と屋根の雪を掘り飛ばしながら、この豪雪はたしかに大変だけど、それでも充実感を感じるんだよね…と話しつつ、仲間たちの顔に笑顔があるのが見えた。

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