「なぜ私は私なのか」≒ Why am I me ? は、哲学にい於いては形而上学、または心の哲学として議論される問題であるいっぽう、心理学では、「なぜ私は私なのか」といった問いを発する人の心理状態そのものに注目し、こうした心理状態や経験については、「自我体験(Ego experience)」と呼ばれている。
こうした自我体験は、日本全国の大学生およそ10人に一人に近い高率で発生しているという調査結果があるそうだけれど、それは心の病とは言えないだろうし、この社会にとって直近に解決すべき問題でもないのだとは思う…。
しかし、…であるにしても、日々起こる事件や問題の要因の一つとして取り沙汰される、自己中心的な思考から生じる誤った判断や行動…とは、「私」についてを、私ではない他者(この世に存在するものすべて)との関係性として捉えることが出来ないということでもあって、それは言い換えれば、「私が、いま・ここに在るのはなぜか」について考えない、考えることが出来ない という心の病であるのかもしれない。
「なぜ私は私なのか」は、「私」と「他者」との関係性についての問題でもあって、自らの内にこの問いを宿し、そして考えることは、人がこの世を生きる上で実はとても重要で意味あることではないかと思っている。
昨年開催した個展は、随分と久し振りだったのだけれど、その最も大きな理由は、「美術とは何であるのか」について考える上では、必ずしも美術作品を制作展示することが最善だとは思えなかったからであって、紆余曲折ありつつ、美術作品の制作展示からは距離を置きつつの20数年間、様々なジャンルの様々な人々との関わりをつうじて、社会と美術との関係性についての認識が深まったと同時に、美術の必要性と可能性について感じ、そして考えることが出来たことは何よりも大きな収穫であったと思う。
写真は、昨年のFlatFileSlash Warehouse Galleryでの制作展示風景
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