3年前、令和元年の10月のこの時期に発生した台風第19号による大量の雨によって千曲川流域では多くの浸水被害が発生。中でも、長野市長沼地区の堤防が決壊したことによって、川の水というよりも濁流となった泥水が住宅地や畑へと押し寄せ、死者2名を含む甚大な被害をもたらした。
ちょうどこの頃、東京で美容室のデザイン施工の仕事を終えたばかりの自分は、友人からの「そちらは大丈夫なのか?」という電話によってこのことをはじめて知って、翌々日に長野市へと戻ってから、とりあえず、繋がりのあるリンゴ農園とその近隣地区の支援に入ることにした。
目に見える最大の懸案事項は、川の水が引いた後に残された大量の泥の始末。
水分と有機物を含んだ泥にはカビが発生しやすく、その泥が乾くと細かな粉塵となって健康に被害をもたらす。畑に流れ込んだ大量の泥の重みと酸欠等によって林檎の木が弱ってしまう…。こうして、災害直後の支援の中心は泥の撤去が主たる活動となった。
自分と泥との付き合いは長い…。
とは言っても、その泥とは自分の作品づくりの素材としてではあるが。
はじめて泥を使った作品をつくろうと思ったのは、大学院の修了作品をつくった時。
その後、自分の興味は家づくりをはじめ、人間の暮らしや…生きるために必要な「土」へと向かうと同時に、森や木や水…「風土」へと向かうことになっていった。
ようするに、自分がこの世とは何であるのか…について考え、そして捉えるために先ずは「土」という存在こそが欠かせない。
台風が山に雨を降らせる。その水が川となって泥や微生物を運び、そこに生き物が宿り、作物が育ち、人が暮らす…。
泥を大量に含んだ川の水の色は、恐ろしくもあり、美しくもあると思う…。
小池雅久展 2022
Masahisa Koike Solo Exhibition 2022
「Muddy River 泥の河」
会期:2022年10月10日~11月9日
場所:FlatFileSlash Warehouse Gallery
〒長野県長野市小鍋11-17
Facebook https://www.facebook.com/flatfileslashstart
公開制作によるインスタレーション(空間表現)による作品展です。
会期中は制作途中段階もご覧頂けます。
作品の完成は、10月29日から11月初旬の予定です。
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