セルフビルダーの苦悩

昨年の今頃はちょうど製作作業真っ只中だった、ラボラトリオ・ツルーガで映画の上映会があった。

「A PLASTIC OCEAN 」(邦題:プラスティックの海)、題名からして間違いなく重いテーマであることは予想は出来たけれど、自分はその映画を観つつ、核汚染された処理汚染水が海に放出されてしまうことを止められないこの社会の愚かな現実についてずっと考えていた。

少し前に、色々と想うところがあってFacebookへの投稿は止めにしようかな…と思ってみたのだけれど、少し考えてみればそれもまた自己満足に過ぎないし、まぁ、前言を撤回したとて、誰に迷惑が掛かるわけでも無し。

自分の思考の健全性という意味からすれば、Facebookというシステムがどうであれ、自分の内に沸き起こる意識を外へと向かって離す=話す ことはことさら重要なのだ。

そう思っていた矢先、先週から始まってしまった福島第一原発、処理汚染水の海洋放出という愚かな行為に、

…ったく!いい加減にしろよアホが!!

という気持ちをどうにも抑えきれない自分。

先週はそれ以外にも色々とあって、長いこと終わりにすることが出来なかった、土蔵のリノベーションの現場から、突如、放出され(作業の強制終了)、後処理は残ってはいるものの、結果、自分の思考的には桁外れに楽になった。

現場は96%の完成状態であったとは言え、こうなってしまうことは必然だったかもしれないと思いつつ、目の前の仕事をそれはこなしつつも、自分は何をすべきかを見失いがちになるほどに追いつめられるといった状況が起こってしまったことについては、深く反省しなければならないと思っている。

具体的に言えば、自分は建築工務店では無いということ。

もちろんのこと、工務店の仕事を悪く言うつもりはまったく無いし、そのことについて認識して貰うことをおざなりに進めた自分にも責任はある。

その違いとはいったいどういった意味で違うのかについてを棚に上げたまま、仕事を請け負っう ということは二度としてはならないと固く誓った出来事だった。

これについてはこのところ、自分の親しい仲間たちとそういった話しになることが多いのだけれど、「似て非なるもの」 についての理解の問題でもあり、特に、建築のような仕事の場合、発注元である「施主」と、それを受注する側との間で、はたしてそのことについて何処まで理解し合えているのか…といったこと。

そもそも、自分は「施主」と「施工者」という関係に於いて歪が生じることが嫌で、そうした関係性に疑問があるからこその、自力施工=セルフビルド であると思いつつ今に至っているのだけれど、このセルフビルドという行為は、現代社会の仕組みの中では、「趣味」あるいは「素人」として認識されていることが殆どだ。

日本では古くから建築の仕組みはかなりシステマティックに発達していて、建築に必要な作業性の向上という意味での分業体制が確立している。

そうした仕組みの下に、各種の「職人」が育って来たという事実があり、そうした「職人文化」が日本の伝統を根底で支えていて、建築のみならず、あらゆる暮らしの必要性に於いて、職を分業するという文化が育まれてきたということだ。

これに対して、セルフビルド=自力施工 とは、そうせざるを得ない状況の中で育まれる方法であり、人里離れた場所で、職人に頼みたくでも頼めるような人がいない といった状況や、職人に頼むお金が無いといった場合に選択する方法で、そういった方法は、日本の文化として認識されて来なかったのだと思う。

ただし、かつての農村に於いては、「互いが助け合う」という村落共同体という仕組みが必要であったこともあり、そういった農村では、セルフビルド的な意識がいまだ残っていることもあるけれど、そいうした日本の農村の殆どが過疎化、高齢化し、互いが助け合うことが出きなくなってしまっているのが現実だ。

そうした現実の中、自分の建築的手法とはセルフビルドであり、どんな仕事も自分一人で行えるかどうかが基本。もちろん人の手を借りられれば助かることは多々あるけれど、あくまでもセルフであること…自分が出来ること、出来るようになることで完成させるということなのだ。

自分はたまたまこの方法しか選択し得なかったからこそ、いまに至っているのだけれど、でも、セルフビルドをつうじてそれまで考えもしなかったことがすべて関係しているということを沢山経験してきた。

そうした経験を、施主である方もまた望んでくれるのだとすれば、「セルフ=自力」によって得た自分の経験は共有して貰いたいと思っている。

ということで、山の谷間にある、使われていなかった建物を借りました。

今後、この場所をつうじて、いまは未だ世間には認識されていない、セルフビルドという方法を、それを望む人たちと共有して行けたらな…と思っています。

興味ある方は、どうぞ遊びにいらしてください。

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