関係の網目

福島県大熊町から避難生活をしていた彼…木村さんと彼の長女、舞雪ちゃんにはじめて会ったのは東日本大震災が起こった翌年の夏。緑が美しい白馬の初夏だった。

木村さんの自宅があった熊川地区は東京電力福島第1原発からおよそ3KM。その原発事故に伴う汚染土の中間貯蔵施設の敷地内にある。

木村さんと出会ってから11年。ようやく熊川を゙訪れることが出来た。

本当はもっとはやく訪れたい気持ちはあったものの、2011年の春に自分に免疫の異常があることが解ったこと、その後の治療の後遺症のこともあって、原発事故の影響による放射線量の高い熊川には念のため行かないことにしていた。

2011年3月11日に起こった出来事が無かったら木村さんとは会ってはいなかったであろうことを思いながらも、あの日、津波にのみ込まれ行方不明になってしまった次女、汐凪ちゃんを彼、木村さんがたった一人で探し始めたことの連なりの中に自分もまたあるということについて考えれば、この世とはありとあらゆる関係性が網の目のように繋がりあうことによって全体が出来ているということでもあって、木村さんと自分の関係もそうした関係の網の連なりの中にある。

いまは未だ繋がってはいないものの今後必ずや繋がる関係というものがあるはずだし、そもそも、この世の全体には始まりも終わりも無く、誰であろうと、何であろうと、関係性を手繰りはじめさえすれば必ずや全てに関係性が生じ繋がるということなのだと思う。

そういった意味からすれば、木村さんが経験した出来事はさぞや大変であったと想像は出来るにしても、その経験を単に可哀そうだとか、不幸だということにして片づけてしまうわけにはいかない。

木村さんと自分は、あの日のあの出来事があったことによって、同じ関係の網目を手繰り始めたということなのだと思っている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です