「表彰台」

名目GDPが世界4位転落したことについて、「オリンピックなら3位までメダルがあるけれど4位にはメダルが無いのと同じで残念」…という街頭インタビューのその言葉が頭の中から消えない…。

「いま・ここ」という現象、社会が目には見えないものである以上、それを捉えるためには、ニュース解説者やコメンテーターの見解よりも、街頭インタビューや、それを選択し報道しようとする理由を想像することが必要かつ有効な手段だと思っている。

>3位まではメダルがあるけれど4位にはメダルが無い…<

自分には、この街頭インタビューのその言葉をつうじて、この国のいま が垣間見えた気がしたのだ。

今年1月1日に発生した、能登半島地震による被災地は未だ深刻な状況であることは、現地で災害復旧活動にあたる仲間をはじめ、たくさんの方々の報告から直に伺い知ることが出来る。

朝、仕事に出掛ける前に、そうしたSNSをつうじた災害現場からの状況報告を見ていたその時、テレビからは、先の街頭インタビューが聞こえてきた。

さして驚くほどのことではないその感想に、しかし、何と言ったら良いのか…、違和感と言うほどではないものの、その言葉が自分の頭の中に残ったまま消えないのはいったいどうしてなのか…と思った。

能登半島に行ったのはもう随分と前のこと。

大火災のあった能登市の朝市通り周辺を歩いたことを記憶してはいるものの、それ以外はあまり覚えていないし能登市から半島の先、珠洲市方面には行ったことがない。

なので、道路が寸断され集落が孤立していると聞いて自分が思い浮かべるのは、地元、長野市周辺の山村集落の姿。著しく過疎化が進むと同時に、そこに暮らす人々の多くが高齢者であるといったイメージがそれと重なる。

そんな山村集落やそこに暮らす人々の暮らしと、転落したとは言っても世界第4位というとんでもなく上位に位置する現実とは、どうにも結びつかないし、違和感と言うほどではないものの、街頭インタビューのその言葉が自分の頭に残って離れないのは、この現実の中に確かに自分がある。けれど、自分のあるこの位置が、現実の中の何処にあるのかが判らないからかもしれない。

もしくは、そうした現実の中の何処に居たいと思っているのか…と、質問を投げかけられたものの、その答えに迷っている…そんな気もする。

日本のGDPを牽引するのは、大企業と大都市であることは明らかだし、地方の、しかも山村だの僻地だのと言った場所の生産力は大都市と比較すれば雲泥の差があるのは事実であって、山村や僻地が大都市に劣っているということではないものの、路線価をはじめ、経済的指標を伴った生産力がその場所の価値にとって重要な基準となってしまっている現実からすれば、過疎化や高齢化とは経済的価値の低さゆえに生じる当然の結果ということになってしまう…。

しかし、山村や僻地といった地方で過疎化や高齢化が顕著になりはじめたのは、たった半世紀ほど前からのことであって、それまでも経済的な格差があったとは言え、過疎化も高齢化もしていなかったのだ。

それというのはようするに、大都市にとって地方の生産力は欠かせなかったということであって、地方と都市、双方の間には経済的な密な関係があったということでもある。

この関係が徐々に崩れ始めたのは何故なのか?

その理由について、一言で、簡単に言い表すことは出来ないものの、そこに関係するのは、日本企業の積極的な海外進出、それと同時に起こる、大都市と地方社会の切り離し(自分はこれについて、意図的に計画された地方社会衰退策だと思っているが…)、さらに地方社会に対する救済策としての制度、新たな産業の提案策が大きく関係しているのではないかと自分は考えている。

その顕著な例が、この国の食料とエネルギーの問題であって、エネルギーで言えば、木質燃料から石炭や原油をはじめとした化石燃料や天然ガスへ、さらにそこから原子力、再生可能エネルギー…へと変換させるという、この国のエネルギー策が大きく関係しているのではないか…ということ。

日本の発展にとって、食料とエネルギーの問題は、最重要の課題であることは言うまでもなく、かつて日本が戦争に至ってしまった理由もここと大きく関係していることからすれば、地方に食料やエネルギーを依存していた時代から、海外へ依存する時代へと変化する流れの中で、地方もまたこの問題に対して言わば強引に参加させられて来たと言えるのかもしれない…。

活断層がひしめく日本列島の隅々に原発をつくるという国策事業。はたして、原発開発がこの国のGNPにとって具体的にどれほどの効果があったのかについては判らないけれど、少なくとも、地方経済が疲弊したそこに対して原発が誘致されたというその事実を、私たちは決して忘れてはならないし、原子力による電源開発はかつてこの国が推し進め失敗した、あの満州政策に匹敵する極めて大きな失策だと自分は思っている…。

そうした意味からしても、地方社会は、GNPが4位へと転落したいまだからこそ、本当の意味での地方再生力である「自治力」を育めなければ、今後益々、“地方社会の再開発化”が進行して行くことになると思う。

そうまでして、表彰台に上がりたいのか…。

この国の国民として、これについて真剣に考える最後の時が来ている気がする。

経済産業省・資源エネルギー庁HP

https://www.enecho.meti.go.jp/…/johote…/energyissue.html

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