この谷間を歩き続けることを選んだのは 私。 誰にも頼まれていない。 ただ、時折思う。 彼 若林奮は、この谷間の先にどんな風景を想像していたのか。
あの時 薄暗いアトリエの中で少しずつ組み立てられてゆくほどに谷間は鉛色の濃さを増し 谷間全体がアトリエの光を吸い込んでしまうようだった。
真っ赤に焼かれた鉄は、大気を吸い込みその表面は鉛色に覆われる。 あの時、彼の横で、緑色の谷間を想像しようとしてはみたけれど、できなかった。
こんど鉛色の濃い鉛筆で、緑色の谷間を描いてみようと思う。
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